「チーム」が成長するために必要なこと

はじめに

日々、サッカー指導者は、選手個人の「技術」「体力」「メンタル」を高め、選手全員に「戦術」を浸透させるためのトレーニングを勉強し、考え、実行し、試合では「練習の成果を出して勝とう!」と「良い雰囲気」で選手をピッチに送り出すことに全力を傾ける。

そして、練習の成果が発揮できたり、試合に勝てたときは「選手の努力の賜物」と皆で喜び、そうでないときは「指導者の力不足」と自分を戒め試合を分析し、次のトレーニングで改善を図る。

時には、練習の日数や時間を増やしたり、ミーティングを開催したり、試行錯誤しながら「指導者が率先して」選手を導こうと孤軍奮闘する。

そして無情にも、月日は流れ、最上級生は卒団を迎え「あと1年あったら、もっと良いチームが作れたのになぁ、また来年から頑張ろう!」と、より指導に磨きをかけるため、更に勉強する。

ただ、毎年思う「強いチームと弱いチームとでは、いったい何が違うんだろう?」という疑問は、いくら勉強しても、どんな講習会に参加しても、決定的なものは見つからない。

もし、こんな悩みを持っているなら、この記事を一度読んでいただくことをお薦めします。

とはいっても、まだ我がチームが大きな結果を残したわけではありませんが。

内容は「チームビルディング」についてです。

みなさんは「タックマンモデル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

これは、心理学者のタックマンさんが「チームの力を最大限に引き出すためには、4~5段階のステップを意識して取り組むことが必要だ」と提唱した論理モデルです。

このモデルに照らし合わせてみると、上記の考え方「だけ」では不十分で、それが「どのステップ」で効果があるのかが分かると思います。

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この記事は、基本的には、この「タックマン」という心理学者の提唱した内容を、私が解釈したものに過ぎません。

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なお、この記事を書くにあたり、仲山進也さんの著書「ジャイアントキリングの流儀」の考え方を「流用掲載」させていただくことに関しては、仲山考材株式会社の関係者の方に承諾をいただいております。

より専門的に詳しく知りたい方は、仲山進也さんの書籍(たくさんありますよ!)を読み漁っていただくことをお薦めします!

関係者の皆様、この記事が著作権を侵害している可能性がある場合は、早急に修正いたしますので、ご指摘いただけたら幸いです。

概要:チームビルディングのN字曲線

チームの成長は、単純な右肩上がりの直線ではなく、N字を描く曲線でなければならないとタックマンさんは提唱しています。

どういうことかというと「①上昇↑」「②一度下降↓」「③再び上昇↑(①と同じくらい)」「④更に上昇↑↑」「⑤落下↓↓↓」といった具合です。

ここで「なぜ一度下降するのか?」「更に上昇ってなに?」「最後は何で落下するの?」とか思いますよね?

それぞれの説明の前に、上記①~⑤の名前の定義だけしておきましょう。

①形成期:フォーミング(Forming)

②混乱期:ストーミング(Storming)

③統一期:ノーミング(Norming)

④機能期:パフォーミング(Performing)

⑤散会期:アジャーニング(Adjourning)

とりあえず名前だけ覚えておいてください。

では、これから、そのあたりを詳しく書いていこうと思います。

形成期:フォーミング(Forming)

形成期(フォーミング)とは、サッカーでいうところの「新チーム結成」にあたります。

この時期は、関わる全ての人が「お互いのことをまだ知らず、どのよう接したら良いのか、とても不安な状態」です。

特徴としては「変な人だと思われたくないので、本音を出さずに様子を見ている」そして「自然発生的なリーダーは、声の大きな選手から生まれやすい」と言われています。

その結果「リーダーが指示を出し、他の選手が指示通りに行動する」という仕組みができあがります。

※このときのリーダーは「指導者」だったり「キャプテン」だったり「中心選手」だったりです。

そして、上記「はじめに」で書いた指導者の行動は、この時期に効果を発揮すると言われています。

ということは「今までの指導は決して間違っている訳ではない」ということになります。

ではなぜ、強いチームに勝てないのか?

それは、このやり方だと「チームのMAXはリーダーの100点でしかない」からです。

要するに「チーム力=リーダーの力量」になってしまい「相手リーダーの力量が上回ってしまうと勝てない」ということになります。

このような状態は「雰囲気は決して悪くないが、チームワークが成熟されているとは限らない」というようなことをタックマンさんは説いてます。

要するに「チームとしては、まだ未熟な状態」と私は解釈しました。

ということは、なんだか「チームを成熟させるための次のステージ」がありそうですね。

では、更に上を目指すためにはどうしたら良いのでしょうか?

この形成期は、ある程度の時間が経過すると「お互いのことが分かってきて、コミュニケーションが取れる」ようになってきます。

そしてある程度「本音を言えるような関係」になります。仲良くなるんですね。

その結果、良くあるのが「言い過ぎちゃう」「痛いところを付いちゃう」「地雷を踏む」ってやつです。

そうすると、どうなるかというと「相手に疑念を持つ」「雰囲気が悪くなる」「関係がギクシャクする」ってなります。

そんなとき、一般的には「まあまあ」と「穏便に済まそう」としますよね?

また、そうならないように、リーダーが「有無を言わせず」強烈なリーダーシップを発揮するというケースも多々あります。

でも、タックマンさんは一味違います。

「事なかれ主義じゃなくて、意見をぶつけ合って、相手のことを深く知り、自分のことを深く知ってもらおう!」と説いてます。

どうやら、これが次の「混乱期(ストーミング)」に突入するキッカケであり「必要なこと」のようです。

ここで、次の説明に入る前に、今までの内容を整理してみましょう

・新チーム結成の当初は、優秀なリーダーの指示にしたがって、全力でプレーしよう!

・人間関係に慣れてきたら、全員でコミュニケーションをたくさん増やそう!

・コミュニケーションが増えてきたら、思っていることを言い合おう!そしてリーダーは仕切ることを控えるようにしよう!

・意見が対立したからといって「穏便に済まそう」としたり「強制」したりすると100点がMAXですが、それで良いですか?

ということになります。

とはいうものの、次の「混乱期(ストーミング)」って、ちょっと怖そうですよね。。。

タックマンさんが言うには、この「チームビルディング」が成功するかどうかは、次の「混乱期(ストーミング)」次第だそうです。

上手くいかないと「チーム(クラブ)崩壊」なんてこともあり得るようなので、どうぞお気を付けください。

仲山進也さん(「ジャイアントキリングの流儀」の著者)は、このことについて

「メンバーみんなで、この「チームの成長法則」と「4つの成長ステージ」を共有する」

という作業を「やってみよう!」とおっしゃっています。

「チームの成長法則」とは、この記事でいうところの「チームビルディングのN字曲線」のことで

「4つの成長ステージ」とは、同じく「上記①~⑤」のことです。今は①ですね。

これらをメンバーで共有することによって、今の状態は「なるべくしてなった自然な現象」だと冷静に受け止めることができます。

そして、余計な不安を抱えずに、次の「混乱期(ストーミング)」に突入することができます。

私があえて、このテーマで記事を書きたかった大きな理由は、ここ(共有)にあります。

混乱期:ストーミング(Storming)

ここからは、いよいよ混乱期(ストーミング)の説明に入ります。

この時期は「各メンバーの本音(私はこう思う)が表面化して対立が起きる」ため、お互いに「イライラやモヤモヤ」を感じます。

その結果、相手の発言や行動に疑念を持つ(持たれる)ようになり、チームとしての生産性が低下する傾向にあります。

今までの経験から、せっかく「自信と確信(みたいなもの)」が生まれてきたのに、悪い印象を受けてしまうなんて辛すぎますよね。。。

こんな思いが続くなら「大人しくしておいたほうが楽だ」「いっそのこと辞めてしまおう」と考えてしまう人は少なくないと思います。

それもひとつの正しい決断だとは思いますが、ここでは「チームが成長するために必要なこと」がテーマなので、話を進めようと思います。

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では、どうすればこの時期を乗り越えることができるのか?それにはいくつかのポイントがあるようです。

①「クラブの理念」を共有する

②「混乱期:ストーミング(Storming)」の意義を共有する

③「個人の安全」を確保する

④「チームの安全」を確保する

⑤「短期間」で抜け出せるように務める

さらにこれらのポイントを下で解説していきます。

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①「クラブの理念」を共有する

あなたは入部希望者の保護者や、他クラブの関係者から「どんなクラブですか?」と聞かれたときに即答できますか?

理念とは、そのクラブに属する者が知らなければならない、クラブの根本的な考え方です。

所属するメンバーの理念に対する解釈が異なるようでは、残念ながら共有はされておらず、あらためて示す必要があるでしょう。

もし、まだ理念自体が存在しないのであれば、速やかに決定しなければなりません。

その際には「抽象的(曖昧)」なものではなく「具体的(明確)」なものが理想だと思います。

解釈の仕方でどうとでも取れる理念は、あまりお薦めしません。

例えば「楽しいサッカー」が理念の場合

解釈の仕方によって「単純にサッカーを楽しんでもらうこと」とも「試合で勝つ楽しさを味わってもらうこと」とも受け取れます。

どちらも含めた意味なのであれば問題ないのですが、そうじゃないなら、いずれ「話が違う」と言われても仕方ありません。

話を戻します。

この時期(ストーミング)を抜け出すためには、まず「クラブの明確な理念」が「共有」されていなければなりません。

対立(理念やビジョンの認識相違)が起きているわけですから、お互いの考えをすり合わせるための「絶対的な軸」が必要となります。

この軸がない状態では、いくら頑張っても解決は困難でしょう。

そして、理念を再認識することによって、早々に問題が解決するケースも珍しくありません。

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②「混乱期(ストーミング)」の意義を共有する

心理学的に見ると、対立が起きる理由は

自分や相手が「急に悪い奴になったから」という訳ではなく「赤の他人から身近な存在になった」証拠なんだと思います。

これは「前進」していると解釈することもできます。

先人が「喧嘩するほど仲がいい」という言葉を残していますが、きっとその通りなんでしょうね。

この時期を抜け出すための第2弾は「起こるべくして起こった良い現象」なんだという認識を「共有」することです。

関係の悪化という「目先の現象として感情的に」捉えるのではなく、もっと「本質的な現象として客観的に」受け入れること。

そうすることによって「感情的」ではなく「建設的」に問題に向き合うことができます。

理想は「この嫌な気持ちは幻!このイライラやモヤモヤをみんなで乗り越えよう!」「おぉー!」なんです。

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③「個人の安全」を確保する

残念なことに、いくら「クラブの理念」を軸に「建設的」な議論をしたとしても、中にはエキサイトし過ぎて「相手の人格」を攻撃してくる人が出てくるかもしれません。

そうなってしまっては先に進むどころか、軽く「チーム(クラブ)崩壊」の危機です。

今は昔に比べて選手や指導者の移籍が多いですね。

もしかするとこの時期を上手く乗り越えられなかった結果なのかもしれません。実に勿体無いと思います。

なのでそうならないように目的をハッキリ共有しておきましょう。

目的は「対立すること」「衝突すること」「喧嘩すること」ではなくて

みんなの意見が場に出揃うこと」です。

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④「組織の安全」を確保する

ストーミング中は「組織全体としてのパフォーマンス」が下がります。

なのでストーミングの「開始時期」と「期間」によっては、本当に「チーム(クラブ)崩壊」の可能性があります。

そうならない様にするためには「生存ライン(組織が生存できるために最低限必要なパフォーマンス)」は確保しておかなくてはなりません。

それが「選手」なのか「保護者」なのか「指導者」なのか「環境」なのか「お金」なのかは状況によると思いますが。

このような地盤を確保しつつ「レッツストーミング!」と進められるタイミングを狙いましょう。

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⑤「短期間」で抜け出せるように務める

ストーミングのキッカケを引き起こすのは「」です。

そしてストーミングの当事者(ストーマー)は膨大なエネルギーを使います。

そりゃ、忖度せず空気を読まず、あえて「問題提起」するのだから、そのストレスは想像つきますよね。

なのでこの時期(ストーミング)は、あまり時間をかけ過ぎないようスムーズに進めることが求められます。

もし他の意見が出ないようであれば「匿名のアンケート」などが有効と言われています。

★ここから下はこれから書きます!

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