はじめに
ローカルクラブに入団する「選手のモチベーション」は様々です。
例えば「上手くなりたいから」という選手もいれば「友達に誘われたから」「親に勧められたから」「体を動かすことが好きだから」「健康のために」といった選手もいます。
では、受け皿である「クラブのモチベーション」はどうでしょうか?
例えば「大会で優勝したい」「優秀な選手を育てたい」「子どもの笑顔が見たい」「運動してもらいたい」と、これもまた様々です。
ここでよく問題になるのは「エンジョイクラブ」に「向上心のある選手」が入団すると「選手」が物足りなさを感じ、逆に「競技力向上クラブ」に「エンジョイ選手」が入団すると「クラブ」が物足りなさを感じる、というもの。
いずれにしても「モチベーションのミスマッチ」による最終的な犠牲者は「居心地が悪くなって辞めてしまう選手」です。
これではせっかく入団を決意した(してくれた)のに残念でなりません。
このような悲しいミスマッチが起きないようにするためにも「クラブは選手のモチベーションを把握」してそれに合った指導をするべきだし「選手もクラブのモチベーションを理解」したうえで入団するといった「モチベーションの共有」が必要かな思います。
その基準に「スポーツの種類」という考え方を据えていけば、きっとうまくいくと信じています。
見るスポーツ
この「見るスポーツ」とは「観戦」「応援」「分析」などを楽しみとするスポーツとの関わり方です。
例えば「サポーター」「解説者」などが当てはまるでしょうか。
もしあなたが「見てるだけで楽しい」ならこのタイプだと思います。
仲間を応援したり、試合を分析したり、時には気付いたことを教えてあげる、というのはいかがでしょう。
それも立派なチーム貢献です。
もし私が指導者だったら、分析に協力してもらおうと考えるかもしれません。
入団する全ての選手がプロサッカー選手志望とは限りませんからね。
しかし「やってみたい」と言われたときに拒む理由もありません。
このままで本当に満足なのであれば構わないのですが「やってみたい」ならチャレンジする価値はあると思います。
そして「プレーすることの楽しさ」も味わって欲しいです。
それでも「見てるほうが楽しい」のであれば強制はしません。
楽しむスポーツ
次に「楽しむスポーツ」ですが、これは実際のプレーを「遊びとして楽しむ」という意味です。
俗に言う「ストリートサッカー」や(一概には言えませんが)「エンジョイスポーツ推奨クラブの活動」が当てはまるでしょうか。
もし選手であるあなたが「勝ち負けにこだわらず自由にプレーしたい」ならこのタイプだと思います。
始めたいときに始め、終わりたいときに終えることができ、負けても大して引きずらない。
しかし大会のクオリティが整備(チームレベル毎に対戦カードを組むことが)されていない地域では、公式試合で勝つことが難しく「勝利の喜び」を味わう機会は少ないでしょう。
もしあなたが勝利を望むのであれば「競技力向上スポーツ」にチャレンジすることをお薦めします。
もし私が指導者だったら「楽しむスポーツ」にとどまることを否定はしません。
可能であればこのタイプで1チーム構成して、定期的に同レベルのチームとの練習試合が行えるとベストだと思います。
ここでの指導は「楽しむ」ことがメインなので、基本的なルールさえ守っていれば選手がやりたいことをさせるでしょう。
しかし「他人に厳しく自分に甘い選手」はこの思想から外れる(他の選手が楽しめなくなる)ので「競技力向上スポーツ」にチャレンジするか「他人に優しく」するよう考えを改めてもらうかの2択を迫るかもしれません。
なぜなら、サッカーは「自分だけが楽しい」が成り立たないスポーツだからです。
競技力向上スポーツ
最後に「競技力向上スポーツ」です。
これは選手自身が「上手くなりたい」と向上心を持ってレベルアップを目指し「サッカーの本当の楽しさ」を知る関わり方です。
これは「Jリーグの下部組織」や「地域の強豪クラブ」などに当てはまるでしょうか。
また「一般的な街クラブ」も「部員数」や「スタッフの充実度」によってはスポーツの種類をこちらに変更することも珍しくありません。
もしあなたが「上手くなりたい」「プロになりたい」ということであればこのタイプだと思います。
ただし「上手くなりたい」なら、日常生活プラスアルファの努力が必要になります。
例えば「特別な理由がない限り練習に参加する」とか「苦手な事でもチャレンジしてみる」とかです。
あなたが「プロになりたい」なら、目標達成のために努力を惜しまず、誘惑に負けず、人生をサッカーに捧げるくらいの覚悟が必要です。
また、同じ「競技力向上スポーツ」でも「プロ志望」とそれ以外では異なると私は思っています。
ここからは厳しい言い方をしますが、日常生活プラスアルファの努力ができないのであれば、それは「口先だけの向上心」です。
あらためて「遊びのサッカーを楽しみたいのか?」「本当のサッカーを楽しみたいのか?」もう一度考えてみましょう。
生活の多くをサッカーに費やせないなら「そこまでしてもプロになりたいのか?」をもう一度自問自答することをお薦めします。
もし私が指導者だったら、このステージが指導者冥利に尽きることでしょう。
しかし、このステージでやっていくことは簡単な事ではありません。
ここではシビアに「選手をレベルアップさせること」が求められ、その先にある「サッカーの本当の楽しさ」を提供しなければなりません。
なので指導者はそれに応えられる実力を備えていることが理想的です。
また(私もそうですが)今は十分に備わっていなくても日々の勉強でそれを補う情熱があるのであればチャレンジしたいところです。
さいごに
はじめに「見てみたい」から「やってみたい」を経由して「上手くなりたい」まで導くことも指導者の役割ですし、そこに辿り着いた選手達と一緒に「勝ちたい」を叶えることも指導者の役割だと思います。
どちらも欠けることのない柔軟な考え方の指導者(クラブ)のもとで活動できる選手は幸せだと思います。
ここで伝えたいのは「どのスポーツの種類も素晴らしい」ということ。
選手はどのスポーツの種類にも関われる権利と資格があり、それを自由に変更しても良いということ。
指導者はこのスポーツの種類の特性と違いを理解して、選手を見極め、より良い適切な方へ導くべきだということです。
そして選手(保護者)と指導者の認識が一致したとき、お互いに快適な環境となるのではないでしょうか。
物理的な環境などの問題もあり、現実には難しいことばかりですが、知恵を絞って少しでもミスマッチを起こさないようにすることが、未来のグラスルーツ拡大につながると信じています。